初めてニュージーランドを旅した20余年前のこと、南島でビールを奢ってくれたローカルの方に、「この国の人口は3百万人、羊がその20倍の6千万頭もいるんだよ」と聞かされたのを覚えています。
はたしてそのとおりだったのかと1993年当時の統計を紐解くと、人口が3,572,000人で羊が50,298,000頭と、すでに羊は「6千万」を大きく割り込んでいました。では最後に羊の頭数が人口の「20倍」だったのはいつか。それは1986年、人口3.2百万に対し羊が6.7千万頭(20.8倍)、上記の説明も合点がいきます。
酪農・畜産大国ニュージーランド、2015年の主要家畜頭数は羊29.1百万、乳牛6.5百万、肉牛3.5百万、鹿0.9百万。羊のトップは変わりありませんが、頭数は当時の「6千万」から半減しています。かわって羊の減少率を上回るペースで増えたのが乳牛。羊毛市場の陰りと乳製品市場の拡大が背景であることは言うまでもありません。
森林業の見地からいうと、同じ第一次産業の酪農業や畜産業という土地利用と比べたときの収益性が、とくに再造林の意思決定に大きく影響を与えます。実際に、羊の頭数が大きく減少を続けた1980-1990年代、ニュージーランドの植林地面積は0.9百万haから1.7百万haへとほぼ倍増しています。
ちなみにニュージーランドの人口は今日現在4.7百万人。「20倍」いた羊は、いまや6倍ほどになってしまいました・・・。
©NZmokuzai.com all rights reserved.
文・図表・写真の無断転載を禁じます