ニュージーランドといえば、飛べない鳥キーウィ。独特の風貌も愛らしいニュージーランド固有種の国鳥だが、そもそもなぜ飛べなくなったのか、ご存知だろうか?
それは大昔のことだ。「森の神」が、病虫害に蝕まれつつある森林の変わりゆく姿を嘆き、「空の神」に相談した。地上に降りて、土中に潜む害虫を食べてくれる働き者の鳥を紹介してくれないかと。「空の神」は早速、空の鳥たちを一堂に集めてボランティアを募ったが、誰もその羽を挙げようとはしなかった。それは実は、とても大きな覚悟と犠牲をともなうのだと、皆が感づいていたからだ。
気まずい空気が流れた。誰もが「空の神」と目を合わせようとはしなかった。普段は賑やかな小鳥たちのさえずりさえも聞こえない。
その時である。一羽の鳥がやや甲高い静かな声で、でもきっぱりとこう言った。「私が行きーぅぃます」。喫驚と安堵で場がざわつく。周りが翻意を促し始める。「翼を失って、もう二度と空には舞い戻れないんだぞ」と。「これからずっと、真っ暗な夜の森で生きていくことになるのだぞ」と。しかし、その決心が揺らぐことは決してなかった。この献身と勇断に対して、神はすべからくかの鳥に屈強な足と細長いくちばしを与えたもうたが、それと引き換えに、あの美しかった翼は過去のものとなった。
果てないのは空だけじゃない。輝くのは星だけじゃない。この森のために、飛ばない勇気をありがとう、キーウィ。
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