[092] 市場バランス良き林業を

日本やニュージーランドの木材市場ではつい当たり前に感じていることが、グローバルな視点では必ずしもそうでないこともある。

そのひとつが、木造建築が当然としてそこにあり、造作材や構造材、エンジニアードウッドや各種木質資材、外構材や家具材などの市場が確立されているということ。たとえば北米を筆頭に木造住宅が主流の国は、世界的には少数派。地域によっては北欧など、製紙業のためのパルプ材需要あっての林業もある。また主に発展途上国で、今でも森林資源利用は薪炭材(今は燃料材というのか)がほとんどのところもあるだろう。

つまり日本やニュージーランドには、林産業を大きなひとつのバリューチェーンと捉えたとき、良質材から低質材までを売り分けられるカスケード型の市場が国内に既に存在するという、ありがたい事実。同じ知恵をしぼるならそれらを活かして、無節良材から燃料材までの各等級をバランスよく出せる林業、それらをバランスよく加工・消費する木材製造業であり木材市場の方が、関わっていて楽しい。

ひるがえって、最近の日本の「バイオマス」や「自給率」報道に思う。補助金が低質材の余剰加工能力の設置をうながし、時限的なFIT制度で値上がった電気料金は一般市民が負担する。ニンジンの受益者が、どうやら地球でも地域でもなさそうな事例も散乱している。それが絵に描く餅であったとしても、せめて手の届きそうな明るい未来に向かって、皆で積み木のようにバランスよく重ねたり並べたりしたい。

バランスの大敵は偏り。多種多様な用途(市場)を組み込んで満たしながら、その潜在価値の最大化を目指していくことが林産業の大きな特徴であり魅力だと思うし、それが木や人には出来るのだから。

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