ニュージーランドには国民党と労働党が二大政党として存在し、総選挙のたびに第一党の座と政権を争うという図式。
3期9年続いた国民党による長期政権の継続が予想された今年9月の総選挙(上図の議席色分けはその結果)で、国民党(青)は労働党(赤)の挽回を振り切って引き続き第一党の座を確保するも、議席が過半数に届かず。グリーン党(もちろん緑)は労働党側、ACT(黄)は国民党側は折込済みなので、巷はニュージーランド・ファースト党(黒)の連立工作の話題でしばらく持ち切りだったが、10月19日夕刻、労働党との連立政権樹立で合意した。
新首相はアーダーン氏、閣僚経験のない37歳女性のこの数ヶ月はちょっとしたシンデレラ・ストーリー。2008年、比例代表にて国会議員に初当選。今年2月の補欠選挙では比例代表からくら替えして当選。今回の総選挙直前の8月に、労働党の前党首が支持率低迷を理由に辞任。新党首に大抜擢されて選挙戦を健闘するも、こちらも過半数に及ばず。しかしながら、ニュージーランド・ファースト党の昨夜の発表を受け、ニュージーランド史上最年少の首相誕生、女性では3人目だ。
この9年間の国民党政権は経済成長ありきの政策で、資本制経済の市場原理にのっとり、来るもの拒まずいけいけどんどん。輸出産業や海外資本の流入などは、手っ取り早い外貨獲得の手段でもあることから厚遇された。新政権で特徴的かつ面白いのは、それが中道左派の労働党、文字通り大衆主義のニュージーランド・ファースト党、そして環境第一なグリーン党の連立という点。具体的な政策が見えてくるのはこれからだが、対外的に見栄えのする国際協定への取組みやGDPの伸びなどよりも、労働・教育・住宅環境改善などを通した国内(国民)生活の質の向上といった、「本質的な部分」に訴えてくることは容易に想像がつく。移民政策も絞ってくるだろう。TPP交渉に一気にブレーキがかかるのではといった報道もすでにある。
林業・林産業視点ではどうか。新連立の各党公約レベルでは、国策としての森林資源マネジメント、丸太輸出のクオータ制、国内加工促進、付加価値創出、均等な雇用機会の確保、などの文字が踊る。半ば強引にまとめると、環境に配慮し、過伐を無くし、丸太輸出や海外からの国内資源への投資は抑え、製造加工業支援による付加価値や雇用の創出、国内産業の競争力強化、といった方針だろうか。イメージとしては、少なくとも議論の方向性としては、悪くない。
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