[098] クロウタドリと守り人

庭のプラムの木の中ほどにクロウタドリ(英名 Blackbird)の巣を見つけて以来、やれ猫は来ないだろうか、今夜はどうも風が強いがなどと、勝手にも守り人のような気持ちで目が離せないでいる。

母鳥はもうこの3~4年ほどうちの庭を縄張りにしていて、付かず離れずの関係というか、決して一線を超えた馴れ合いは無いものの、庭仕事を始めるとどこからか現れ、阿吽の呼吸で掘り返された場所にいち早く舞い降りて地表の虫を啄ばむような、そこはかとない同居関係が続いている。そんな母鳥が今年は3羽の雛を孵した。抱卵の時期は気を揉む分だけ長いが、孵ってからの成長は早い。左は4日前の、右は今日の写真。ずいぶん図太い表情になってきて、巣の中も見るからに窮屈そうだ。098c

この週末眺めていて気づいたのだが、孵化当初は消化のよさそうな(?)小さなミミズばかりをせっせと届けていた親鳥たちが、徐々に食べ応えのある食材を運び始めた。左の写真はウェタ。ニュージーランド固有の昆虫で、大きなカマドウマ+コオロギのような愛嬌のある虫。右の写真で父鳥が咥えているのは、どうやら何かの甲虫をパンではさんだサンドイッチ。全粒粉入りとは何気に健康志向。他にもカタツムリの中身などのときもあり、メニュー選びにも飽きさせない苦心のほどが感じられる。098e

3羽の中でも、給餌時の位置取りが明らかに上手な一羽は体も大きく、早くも巣のふちに停まって小さな羽をパタパタさせ始めた。残りの二羽も日に日に表情から幼さが抜け、巣立ちの日もそう遠くは無いだろう。ニュージーランドのクロウタドリは、その美声を愛する英国移民が、故郷を懐かしみ持ち込んだ個体が野生化したのが始まりと言われる。アコースティックギターの旋律が美しいビートルズの「Blackbird」もこの鳥のこと。

無事ここから旅立ち、空に学んでやがて舞い戻り、また仕事部屋の隣できれいな唄を聴かせてくれれば、猫の声にも風の音にも耳を尖らせていた自称守り人は、陽のあたる窓を開けて君たちの姿を探すだろう。それが今から楽しみだ。


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