とある場で、スギ丸太の値段が話題に。曰く、スギ中丸太の価格は1960年頃のそれに戻っていると。ということは、物価はその間で5倍以上になっているので、スギ丸太の実質的な価値は1/5以下になっていることになる。
気になって自分でも検証してみたがそのとおりだ。実質価格で見ると、スギ丸太価格は1973年をピークに減少傾向にある(当社独自調べ)。その時代と言えば、旺盛な民間消費に支えられた1960年代の高度経済成長期を経て、1973年の第一次石油ショックにともなう経済停滞。戦後初のGDPマイナス成長がまさに翌1974年と、景気面での背景や木材需給構造の変化から、その奇異な価格変遷についてはなんとか説明出来そうなことが分かった。
さて、次に頭に浮かんだもうひとつの疑問。この「安価」な日本のスギ丸太価格は、2017年現在、他国の針葉樹丸太価格と比較してどうなのか。前置きが長くなったが、これが今回のテーマです。参考資料として、主だった針葉樹生産国の各国国内製材向け丸太価格をグラフ化してみた。
結論から言うと、スギ丸太の日本国内価格は、他国の針葉樹丸太と比較してもトップクラスだ。そしてここは極めて需要なポイントだが、スギの材質が絶対的に以前に比べて安定しておらず、相対的にも競合他種と比べて必ずしも優位ではないのにもかかわらず、である。すなわち、現在でも日本のスギ丸太価格が国際的に見て十分に「高価」だということは、山側の収益性云々は、その仕組みや生産性の問題と言い換えられよう。補助金の是非や使われ方も含めて議論したい。
©NZmokuzai.com all rights reserved. 文・図表・写真の無断転載を禁じます