林業の核となる作業は「木を植える→育てる→伐る→また植える」でよいだろう。加えて、産業・事業として捉えるならば、これで収益を上げるために「(かかったコスト以上の値段で)売る」作業も不可欠となる。
それが唯一無二の商品でも無い限り、競合市場で「売る」ための戦略は突き詰めるとふたつしかない。「コスト競争力」と「差別化」。一般に、前者はコモディティ市場で、後者はニッチ市場で際立つ。
ニュージーランドの林業を例にとると、成長量と汎用性に秀でたラジアータパインを選択、その集約的施業を行うことで、「コスト競争力」を先ずは戦略の中心に据えた。それと同時進行で、ラジアータパインという樹種の特性を活かした育種や製品開発を通じ、主に高付加価値材分野での「差別化」も図っている。これらはいずれも、国際市場でニュージーランドのラジアータパインが、競合他国の競合樹種と競うためのものだ。TPPしかり、オープン化が必至の国際市場の中で、身の丈を知り競合を意識した市場戦略はますます重要になっていく。
ニュージーランドで林業に携わる者に「林業とは何か」と問えば、収斂するとおそらくはこういう答えになるはずだ。「林業とは土地利用のひとつであり、木材を生産して収益を最大化すること」と。(土地利用とことわったのは、林業の収益性いかんでは、その土地で運営可能な他の産業との競合でもあるから。)
事業としての「競合」や「収益」という単語を多使すると、では森林の公益的機能は、という切り口の問いが出てくることがある。
<続く>
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