スギとラジアータパインが、輸出丸太市場でも日本国内市場でも競合している。
中国市場におけるニュージーランド産ラジアータパイン丸太価格の強含みがしばらく続いている(下図。筆者調べ&独自指数化)。
昨年初頭にUSD120/㎥ CNF だった平均価格は、今年5月でUSD140/㎥ CNF に。昨年5月比でも、USD12/㎥(14%)アップだ。世界一の丸太輸入国中国の、その針葉樹丸太輸入量の3分の1以上(シェア1位)がニュージーランド産だから、中国ではこの数年、ラジアータパインの価格がベンチマークとなって丸太市場が動いている。
さて本題。スギとラジアータパインが明らかに競合している。
① 近年の中国丸太市場では、日本からの丸太輸入量も増え、スギが一部マーケットでも見られるようになったが、同等のグレードを比べると、スギがラジアータパインよりも安価で取引されている。
② 輸入ラジアータパインと国産スギの両方を挽く日本の製材メーカーでは、中国市場でのラジアータパイン丸太価格続伸の煽りを受け、より安価なスギ丸太を投入する割合が増えてきている。
③ 上記2例ともに、基本的には産業資材(コモディティ)としてのニーズ。
スギはラジアータパインに比べ比重や強度で劣るので、数年前までは、例えばパレット材や重量梱包用材としてスギを使用することは、エンドユーザーも躊躇していた。しかし今のように無視できない価格差がつけば、コストパフォーマンスが優先されるということだろう。結果、いわゆる「安かろう悪かろう」市場でスギが台頭しているという現実。それはそれで立派な市場セグメントだが、そこに戦略的意図はあるのだろうか。日本林業に基礎体力(本質的なコスト競争力)が付いたという話も聞かない。
FITからの木質バイオマス然り、低質材でも量を回せば(残念ながら山元以外のところに)お金が降りてくるというシステムがこの「低価格スギ現象」の拠り所だとしたら、アッパーマーケットもバランスよく維持・創出しておかないと、やがて低質材に侵食され、山の単価が落ちるだけになるので心配だ。市場原理に基づかない競争力は、市場の歪化を招く危険度が高い。それを活性化とは呼びたくない。
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