[079] 日本の木材需給と自給率

環太平洋地域内、主要木材市場の木材需給の推移や予測に関するプロジェクトの作業中。そのひとつである日本。参考資料として林野庁「森林・林業基本計画」を眺めつつ、自給率などについて感じたことの覚え書き(私見)。

先ずは、林業・木材業界の皆さんにとっては周知だが、昨年見直された2020年・2025年見通しと目標値をグラフ化。数値は林野庁さんのホームページより。

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(1) 【用材の総需要が7千万㎥レベルで現状維持?】人口や住宅着工数の減少を考えると、かなり強気な見通しに映る。長期では縮小傾向にあることからも、現状維持のためには大規模な新需要の創出が不可欠。

(2) 【用材7千万㎥中、国産材で3千万㎥ ?】蓄積・樹齢構成からの適正原木供給量は織込み済みと推測。市場が外材という選択肢を含めた「適材適所」を原則とするならば、国産材(スギ・ヒノキ)の木材物性とコスト競争力でどこまで外材を代替出来るのか。

(3) 【2025年には国産燃料材の消費量が8百万㎥に?】純粋な意味での「未利用材」が、市場競争のなかで有効活用される自然増なら異存は無いのだが・・。国産材総供給量4千万㎥中、用材比率が75%で燃料材比率が20%。20%は高くないのだろうか。バランスを失うとしわ寄せを生む。

(4)【2015年現在33%の自給率が、2020年に40%、2025年に50%?】あくまで一般向けのキャッチーなスローガンとして。分母が小さくなっては(結果として「率」が上がっても)意味がないので。大事なのは分母・分子ともの底上げと、その内訳やバランス。たとえ率が下がったとしても。

(5) 【まとめ】重要性の順位は (1)>(2)>(3)>(4) であるべきか。(3) の話題性先行や (4) の%だけの独歩では実態を見誤る。最も避けるべきは (4) のための (3) の優遇。いわゆる「残材(副産物)」が優先・優遇されると本末転倒にも。用材の需給バランスや価格が崩れ、産業全体の魅力度や収益性が悪化する。優良材はもちろんのこと、低質材には低質材の(たとえ安価であっても)木材全体の需要を支える・守る役割がある。

(6) 【余談】ニュージーランドでの総供給量に占める燃料材の割合は、製材工場などでのに自社内循環利用としてのボイラー用などを除くと、現状1~2%程度。パルプ・繊維板向けの需要が強く、エネルギー利用は価格競争で後塵を拝する。発電であれば水力や地熱がある(拙コラム#078参照)。


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