縁あって、また主催者の方々のご好意に甘え、岐阜の郡上や飛騨の森を訪れる機会に恵まれた。スイスのフォレスターと山を歩き、観察し、森づくりについて学ぶというもの。
たびたび登場する『近自然』というキーワード。環境と人間の豊かさの両立。その響きは、人がそこにある自然の営みを尊重した上で手を加え、森の恵みを上手に利用させてもらうといった、日本人が「里山」という言葉から連想する「林」的な暮らしや、美しい森づくりのイメージとなんとなく重なる。トトロは無理でも、いたずらタヌキくらいは住んでいそうだ。
『スイス林業』の現在の立ち位置は、どうやらニュージーランド林業(短伐期・皆伐・再造林の人工林施業)とは対極的なもののようだが、はたして産業としてはどうなのだろう? 多種多様な材の需要をカスケード型に落とし込められる集落・町・流域・経済単位(ある一定の規模までの需給バランス内)では可能なのかもしれないが、その先は? 経済性、流通システムや価格メカニズムにも興味あり。
育成木・ライバル・サポーター…
安定性・バイタリティ・クオリティ…
下(根張り)から上(樹冠)へ…
択伐・天然更新・恒続林…
キツツキは友達… etc.
ノートを開くとこんなことを走り書いている。私は『近自然』や『スイス林業』についてまだほとんど知らないし、ここで語れる立場にもない。では一週間の研修(正味3日間のワークショップや参加者・関係者との交流の場)から何を得、持ち帰ったのか。以下簡単に。
(1) 単純に、とても楽しかったし勉強になった。在ニュージーランドゆえになかなか無い機会。日本の山を歩いて、観て、講師陣のレクチャーだけでなく、業界内外で活躍中の皆さんの意見まで聞けるという、知的で充実な時間とたくさんの出会い。あらためてこのご縁と、主催者の方々のご企画・ご好意に感謝します。
(2) 目から落ちた幾枚かのウロコと、広がった視野。「なるほど、こういう風に山林の過去・現在・未来を見ているのか」という多くの気づき。実はその後すぐに、まったく別件で九州の山を見る機会があったのだが、以前も歩いたはずの森林がまったく違う視点をもって目に映る。これは素直に驚きだ。
(3) 林産業・木材コンサルタント視点の疑問点。「なるほど、コンセプトやイメージはつかめました。ある種の理想形だとも思います。で、それで林業はまわるのですか?コストは? 産業構造は? 市場や価格は? 時間軸は?」今後、これらを検証する場があればさらに面白いし、より腑に落ちる学びになるはずだ。
縁、出会い、学び、気づき・・・お世話になりました&ありがとうございました。こちらからもまた、発信していきます。
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