[095] 林政史上の分岐点か?

前回のコラム#094で書いた新連立政権発足による政権交代劇から約一週間が過ぎ、林産業関連含め、新政府の政策の骨子が発表され始めている。

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新政権誕生直後の常として、とかく前政権とは違った色や真新しい改革案を前面に押し出してくるものだし、まだ草案・声明段階であることを先に断っておく。

その上で今回際立つのは、それらが国内の産業や資源、地域経済に強く目を向けたものであること。多少ドラマチックにいうと、前政権の(ある意味で手段を問わない)経済成長ありきな姿勢に対して、より本質的で目に見える、かたちあるものへの回帰といってもいい。備忘録を兼ね、いくつか林産業関連で目を引くものを挙げる。

(1) 森林局の復活。1910年代以降の拡大造林時代に国有林管理を一手に担ってきた森林局は、国有林の完全民営化に伴い、1980年代にその役目を終えた。以降、人工林の管理は、基本的には全て所有者の裁量に任されている。ここにきて改めて、国策を司る機能の必要性が再認識された模様。林業省も第一次産業省から再び独立するらしい。

(2) 十億本植林プロジェクト。これは年間十億本の苗木を植えるという目標設定。植栽密度が千本/haとして、年間十万haの造林計画。産業として成熟期に入った近年の植林実績を踏まえると相当に強気な数字であるが、不可能ではない。ただし、これは単なる数字遊びで終わらせず、木材の市場戦略と合わせて語られなければ意味が無い。

(3) 国内加工業や地域経済振興に対する積極的な支援と、海外からの国内資源向け投資の抑制。これらは私がニュージーランド林業に携わってきた20数年の間だけでも繰り返し謳われてきたことだが、近年の中国向け丸太輸出の急増によって時計が振り戻された感がある。自由市場主義の中でも、何らかの戦略や国内優遇措置は必要だろう。

(4) 気候変動関連。京都議定書からパリ協定を経て、国際的にもいまだ先行きが不透明な分野だが、ニュージーランドは独自ででも、2050年までの「ゼロ・カーボン」を目指すというもの。これは、排出権取引というかたちで林業経営の損益や森林評価額査定業務に大きく関わってくるので、継続的に動向を注視していかなければならない。

これらが意味するのは、ニュージーランド林業政策史上のひとつの大きな分岐点だろうか、との期待を込めて。


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