ニュージーランド林業の育種は循環選抜である。すなわち、種の選抜と交雑を繰り返して、優良遺伝子を集積するのが狙いだ。
ニュージーランドにおける体系化されたラジアータパイン種改良の歴史は、1950年代にさかのぼる。当時は実際の山林から目視で優良個体が複数選抜され、採種園にて挿木栽培された後、それらを母樹とした自然交配(つまり雌はランダム)で優良種が生産されていった。
袋掛けで花粉を噴霧する、人工交配が本格的に導入されたのは1980年代のこと。これにより、より高い確率でコンスタントに有料遺伝子を集積することが可能になり、より良い木材生産につながる人工交配による精英樹が、採種園の母樹として広く採用されることになった。現在でも、この人工交配法がニュージーランドの採種園の多数派となっている。
1990年代後半になると、当時の大手林業会社が自社林用の「ベスト・オブ・ベスト」な種の開発を目指し、不定胚を使った長期貯蔵が可能なクローンの生産に力を注いだ。これは一定の成功を収めて商品化もされているが、その後の業界再編にともなってサプライチェーンが大きく変化した事もあり、継続されるも商流の主流とはなっていない。
今日のラジアータパイン苗木出荷数の上記タイプ別シェアは、「人工交配」が約45%、「挿木を含むクローン系」が約30%、残り約25%が旧式の「自然交配・その他」となっている。市場では、遺伝的改良度の高い種子・苗木が、より高い値で取引される。改良度合いを示す指標や昨今の研究のトレンドについては、また次の稿にまとめたい。
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以下、蛇足余談。
最近、日本の「無花粉スギ」に関する記事や統計を目にする機会があったが、そもそも論として、スギの次もスギなのか? 問題は花粉か? ゼロベースの解は、もしかしたら「無花粉スギ」ではなく「スギ以外」かもしれない。
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