[112] 由々しき枝打ち実施状況

ニュージーランドの近年の枝打ち実施状況が望ましくない傾向にあるので、自身への覚え書きとしても、ここで警笛を鳴らしておきたい。

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上図は既存ラジアータパイン人工林を対象とした「枝打ちおよび生産間伐実施状況」のアンケート調査の結果だが、着目したいのは「枝打ちをしない(グラフの青+赤)」割合のコンスタントな減少だ。その率、67% (2007) → 58% (2012) → 49% (2017)。では、この10年間で何が起こったのか、それは丸太輸出量の急増。6百万㎥ (2007) → 13百万㎥ (2012) → 17百万㎥ (2017)。手をかけなくてもそれなりの丸太がそれなりの値段で売れるのなら、コストをかける意味合いや動機は薄れる、という現象が如実に表れている。

多くの関係者は丸太輸出増を歓迎しているだろう。サプライヤ、バイヤー、商社、物流関係、伐採業者、一般の森林所有者・・・。しかしこれは他方で、由々しき問題でもある。結果として例えば、”Made of NZ pine” で “Made in China” の木製家具がニュージーランドの家具屋に並ぶ。グローバリゼーションの行きつく場所は、国内の経済循環と相反するという例。消費者の選択肢が増えるのは良しとして、業界人としては歯がゆいところだ。

NZパイン(ラジアータパイン)の国際市場における最大の強みのひとつは、クリアの長材がとれることだ。材自体の持つ高い汎用性(防腐処理能力など)や扱いやすさと合わせ、その強み・特長を上手く活かした内装材や外構材としての利用が、ラジアータパインの将来・付加価値創出にとって非常に重要だと思っている。また、きちんと枝打ち・間伐された人工林には潔い人工美がある。少なくとも以前のように6~7割の森林所有者が枝打ちに対して動機を抱くような、つまりはリターンがコストを超える、「付加>負荷」な市場づくりに関わっていきたい。

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