[127] カラーコーンは見てないが

自分のことを読書家だと思っている。否、いた。

冷静に思い返すと、そうであったのは二十歳過ぎくらいまでで、社会人となってからは人並みかもしれない。あの頃は乱読ではあったが、ほぼ小説ばかりを読んでいた。以降は、ビジネス書や趣味・実用書、ノンフィクションの類を手に取ることのほうが多かった気がする。活字好きなのは間違いないようだ。

最近、また小説を好んで読み始めている。それも、むかし読んで、また読み返したいと思わせてくれる本を。好きな作家の初期と後期を読み比べてみたり、その他にも、知識の持ち合わせはあるが、通読した記憶のない名作なども選りすぐって。よみがえる感情もあり、まったく違った風景が広がることもある。

ある人にそんな話をすると、得意そうにこう言われた。「あんさん、そりゃ『折り返した』っちゅうことでっせ」。

その時は「なるほど、そういうものなのか」と思ったが、日を置いて、いやなにか違うぞと別の言葉を探した。「『やり直したい』わけではない。『懐かしい』のとも違う・・・」。そして、はたと気づいた。「そうか、『確かめたい』のだ」と。いわば、これは定点観測ではないだろうか。時を経て、同じ文章を読んで、今の自分はどう受け止めるのか。変わったのか、変わっていないのか・・・。

その人にそんな話をすると、もっと得意そうにこう言われた。「あんさん、それが『折り返した』っちゅうことでんがな」。

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