[142] カーボン・ファーミング

「カーボン・クレジット」という金融商品が世間(の一部)をざわつかせている。

周知の通り、温室効果ガス排出量の削減に取り組むということは、今や国際社会でも国内政策としてもデフォルトとなっている。それぞれの目標値達成に向けて、各国・各企業は鋭意努力する、ということになっている。「カーボン・ニュートラル」や「カーボン・オフセット」という用語も日常的に目にする。ニュージーランドの場合、『十億本植林計画』や『カーボン・ゼロ法案』がこの時勢の延長線上に在る。

削減努力に異論があろうはずがない。ただ少々厄介なのは、カーボンは買える(売れる)ということだ。金融商品だから当然ビジネスが発生する。一例だが、今ニュージーランドをざわつかせているのは、次のようなケース。『今まで酪農畜産業を営んできたが、経営にも波がある。環境問題とやらで、カーボン・クレジット相場は昇り調子。いっそ全部植林してカーボン収入を当てにしよう。場合によっては土地ごと投資家に売ってしまおう』。この場合:

1/ 投資利回り的には針葉樹の単純一斉林になる(多様性はない)。
2/ 植林以降はある程度ほったらかせるので、雇用につながらない。
3/ 酪農畜産まわりが失業。それで成り立っていた町は徐々に衰退。
4/ 酪農畜産はこの国の基幹産業であり国民のアイデンティティ。
5/ 投資家やクレジット(免罪符)が欲しい大企業は虎視眈々。

酪農畜産業は環境・カーボン論では分が悪いから、現状、政策がこの流れを助長しているところもある。カーボンマネー・ゲームがひとり歩きする前に、それ以外の産業や土地利用に対するセーフティネットが必要だ。

最後に林業・木材産業コンサルタント視点で付け加える。「木がいっぱいは良いんじゃないの?」というが、木材市場の需要を超える単純一斉林(ラジアータパイン)の増殖は供給過多になるのでやめてほしい。

142 (2)


©NZmokuzai.com all rights reserved. 文・図表・写真の無断転載を禁じます

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です