iPhoneの箱を捨ててないことに呆れられたことがある。
そんなの開けたら真っ先に捨てるものだ、と言われた。あの時は、かわりに本棚を整理することでプレッシャーをやり過ごした。別にあの小ぎれいな白い箱が惜しいわけではない。ただそれを捨てた場合、同梱のSIM取り出しツールをどこにしまい直せばいいのか分からないだけだ。
物を捨てるのは苦手かもしれない、断捨離系の本は好きなのに。その手の本を読むと心が少し軽くなり、前向きな気分になる。そしてしばらくすると、そのポジティブなエネルギーを取り戻すため、同類の本を求める。かくして、片づけ上手になるための本が本棚に増えるのは、何かおかしい。
なんとまぁ、物に囲まれて生きていることか…。ニュージーランドに来た時、スーツケースひとつと手荷物だけだったことを思うと、愕然とする。当時、旅行鞄など大人びたものは持ってなく、友達の母親のものを借りた。そのレトロなデザインのスーツケースは、今ももちろん家にある。内緒で借りっぱなしだが、衣替え時の収納用に大切に使っているので許してくれるだろう。
もうひと月以上続いているので公言するが、この正月から、一日五個以上いらない私物を捨てると決め、今のところ継続中だ。しばらくは楽しくほいほい捨てられていたが、だんだん苦しくなってきた。物の数と意志の強さには限りがあり、別段いつまで続くとも想定していないが、だいぶ部屋が片付いた。潜在的整頓好きとしてはとても気持ちがいい。
だけど、引き出しの奥のiPhoneの箱はまだ捨てられていない。理由は上述の通りだが、このスマホを買った五年ほど前に一度だけ使って以来、箱の中で眠っているであろうあの細い針金みたいなやつは、ただの一度も手にしたことは無い。有事にはきっと、その辺の物で簡単に代替できるんだろう。そういえば、そんなことも本に書いてあったな。
今年の抱負は、iPhoneの箱を捨てること。
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