[117] 外角低めの真っ直ぐで

今は何事もオンラインの時代であるが、子供の頃はもとより大人になった今でも、私は本好き・活字好きの部類だと思う。

だからこそか、人に本を薦めるのは本当に難しい。「人それぞれ好みはある」という真っ当な理由もあるが、自分なりに読書と深く関わってきたつもりだけに、「自分の好きな本を読まれる=自分の心の奥を覗かれる」ような恐さや気恥ずかしさがある。本棚を見られることすら照れくさい。付箋の部分はどうか開かないでください。

音楽や映画もそうだが、読書好きの方なら、折に触れ読み返す本が手元に何冊かあると思う。家に帰ればあるのを承知で、旅先の本屋でつい手が伸び、本棚に版数違いが並ぶこともある。落ち込んだときなどに手に取るマイ定番もあるが、上述の理由から、この場でそれらを並べることなど到底出来るわけがない。

ではなぜ今回このテーマかというと、先日とある場で「好きな本」を聞かれ、不意を衝かれ返答につまったので、陰(この場)でこっそり言い訳をしたかったのです。長く逡巡していられる状況でもなかったので、その時とっさに頭に浮かんだのが『野村ノート』。野球本?と素通りすることなかれ、一般教養としてもビジネス論としても示唆に富む愛読書。

野村監督の名言は数多いが、私が良く想巡するもののひとつが「迷ったら原点」。言い換えると、初心に帰る、という意味合いもあるのだろう。氏専門の野球で言えば走り込むことによる下半身強化であったり、『野村ノート』では投手がアウトローのストレートをきちんと投げられる能力であったりする。

その文脈でいくと、仕事へのアプローチ含め、自分が変化球を多投しているのではないかと感じるときにその言葉がふと頭に浮かぶ。ひどい時など、原点はどこだったかでまた迷うもんだから世話がない。自分なりの縦軸と横軸はぶれないようにしたい。とりあえず、「次は外角低めの真っ直ぐで!」と自分に言い聞かせてみる。
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