[144] 日本の国産用材率 2019

「自給率」は上がっても、項目別に見ると疑問が湧く。

林野庁発表の2019(令和元)年次資料によると、日本の木材自給率は前年より1.2ポイントアップの37.8%となり(図1)、2011年次から9年連続の上昇となった。連続の上昇を保った「自給率」ではあるが、2025年目標50%に向けてはペースを上げていかなければならない。また、総供給量は4年ぶりに減少に転じている。144a

次に、項目別に2019年次データを前年と比較し、増減の割合をまとめた(図2)。「輸入燃料材」の増加率が24.6%と顕著だ。続くは差があいて「国際燃料材」10.9%。その他は微増か減少。すなわち前年比率で言うと、
① 総供給量は減少
② 伸びたのは燃料材
③一番伸びたのは輸入燃料材、となる。
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木質バイオマス発電所建設のニュースが、まるで雨上がりのキノコのように目に付く昨今、低価格材の割合が増すと山の単価は下落することも考えたい。「燃料材」単独での増加は産業構造や市場にひずみを招くこととなる。

理想は、内外産を問わず国内市場での木材利用量が増し、それを牽引するのは高価格な「(国産)用材」需要で、その結果、副産物・低価格材の有効活用として「(国産)燃料材」供給量も増すことだろう。

その想いで、「国産用材率」なる指標を提唱したい(図3)。2019年次の総供給量に対する「国産用材率」は29.1%、近年は停滞気味だ。「自給率」の上昇が取り沙汰される中、「国産用材率」は2013年次から変わらず28~30%の範囲内に留まっている。144c

筆者の願望で言うと、図3で示した三つの値、(1)「国産用材」の供給量も、(2)「国産用材以外(外材含む)」の供給量も、そして (3)「国産用材率」も、すべて上昇する市場の姿、活性化が見たい。木材という素材が多く広く使われ、適材適所で外材も活躍する。国内森林の年間成長に応じた収穫量と市場の需給バランスさえ取れていれば、相対的な「自給率」など下がっても良いではないか、と思うのだが?


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